Zcash の透明とシールドの違い:アドレス、プライバシー、マイニング報酬
マイナー向けに Zcash の透明とシールドの違いを解説。t1、zs1、u1、TEX アドレス、閲覧キー、ZIP 317 の手数料、coinbase 報酬のシールド義務まで。
✦ 要点
- 透明な t1 アドレスと t3 アドレスでは、アドレスと金額が誰にでも見えます。Bitcoin とほぼ同じです。
- シールドされた送金では、当事者、金額、メモが隠されます。NU6.3 以降、Orchard プロトコルの新しい資金は Ironwood プールに入ります。
- ユニファイドアドレス(u1)は複数のレシーバーをまとめたもので、TEX アドレス(tex1)は透明なインプットからの資金だけを受け付けます。
- 透明な coinbase の出力は100ブロックで成熟し、使う前にシールドすることが今もコンセンサスで義務付けられています。
- ZProMiners は透明アドレスへの coinbase 直接受け取りのみに対応しています。自分で管理するtアドレスでマイニングし、報酬が成熟するたびにシールドしましょう。
Zcash の透明とシールドの違いは、「誰がトランザクションを読めるか」という1つの問いに集約されます。透明な送金は Bitcoin と同じ仕組みで、アドレスと金額を誰でも見られます。一方、シールドされた送金では、送信者、受信者、金額、メモが隠されます。
マイナーにとって、この違いはすべての報酬に関わります。ZProMiners では、ブロック報酬はまず透明アドレスに届きます。そして Zcash のコンセンサスルールにより、使う前にシールドしなければなりません。
Zcash の透明とシールドの違いを一覧で
Zcash は、透明な資金とシールドされた資金を別々のバリュープールで管理しており、アドレスの種類ごとにどのプールを指すかが決まっています。次の表は、マイナーとして出会うアドレスの種類をまとめたものです。
| アドレスの種類 | 先頭の文字 | 新しい資金の行き先 | アドレスと金額が見える相手 | ZProMiners のユーザー名 |
|---|---|---|---|---|
| 透明 P2PKH | t1 | 透明プール | 誰でも | 使用可 |
| 透明 P2SH | t3 | 透明プール | 誰でも | 使用可 |
| TEX(ZIP 320) | tex1 | 透明プール | 誰でも | 使用不可 |
| Sapling | zs1 | Sapling プール | 鍵の保有者のみ | 使用不可 |
| Orchard レシーバー | u1 の内部のみ | Ironwood プール(NU6.3 以降) | 鍵の保有者のみ | 使用不可 |
| ユニファイド(ZIP 316) | u1 | 使われたレシーバーのプール | そのレシーバーによる | 使用不可 |
Zcash の透明アドレスとシールドアドレスの種類
透明アドレス:t1 と t3
透明アドレスは、Bitcoin の設計をそのまま受け継いでいます。t1 アドレスは P2PKH で、1つの鍵で管理されます。t3 アドレスは P2SH で、マルチシグなどのスクリプトで管理されます。メインネットにおけるどちらのプレフィックスも、Zcash プロトコル仕様書で定義されています。透明な送金は、どのブロックエクスプローラーでもアドレスと金額が表示され、残高もすべて公開されます。
Sapling アドレス:zs1
Sapling アドレスは zs1 で始まり、2018年10月の Sapling アップグレードで登場しました。Sapling の送金では、送信者、受信者、金額、512バイトのメモが第三者から隠されます。Sapling は現在も使えます。ただし、プロトコル仕様書は新しいアプリケーションにはユニファイドアドレスを推奨しています。
ユニファイドアドレス:u1
ZIP 316 で定義されたユニファイドアドレスは u1 で始まり、複数のレシーバーを1つの文字列にまとめます。1つのユニファイドアドレスには、Orchard、Sapling、透明のレシーバーをそれぞれ1つまで含められます。透明レシーバーは P2PKH か P2SH のどちらか一方だけです。少なくとも1つのシールドレシーバーを含む必要があり、旧式の Sprout 用の枠はありません。送金側のウォレットは、自分が対応しているレシーバーのうち、Orchard、Sapling、透明の順で最も優先度の高いものを使わなければなりません。
Orchard と新しい Ironwood プール
Orchard は、2022年5月の NU5 アップグレードで導入されたシールドプロトコルです。単独のアドレス形式を持たないため、Orchard レシーバーはユニファイドアドレスの中にしか存在しません。2026年5月、あるセキュリティ研究者が Orchard の回路に健全性(soundness)のバグを報告し、6月に NU6.2 で修正されました。続いて2026年7月28日に NU6.3 が有効化され、Ironwood プールが追加されました(ZIP 258)。Ironwood は Orchard と同じプロトコル、同じアドレスを使い、そのノートは量子リカバリー可能(quantum-recoverable)です。このアップグレード以降、旧 Orchard プールは新たな資金を受け付けません。その結果、Orchard レシーバー宛ての送金は、現在は Ironwood に入ります。
TEX アドレス:tex1
ZIP 320 で定義された TEX アドレスは、t1 アドレスを tex1 で始まる形に再エンコードしたものです。鍵ハッシュは同じなので、資金は透明で公開されたままです。ただし、送金側のウォレットに対して、透明なインプットだけを使うよう指示します。一部の取引所が TEX 形式の入金アドレスを表示するのは、どの透明アドレスから入金されたかを確認したいからです。そうすれば、必要なときに資金を返送できます。シールドされた資金から送る場合、対応ウォレットは2つのトランザクションを作成します。まず新しい透明アドレスへシールド解除し、次にそこから TEX アドレスへ送金します。
透明取引とシールド取引で第三者に見えるもの
Zcash の透明とシールドの違いは、外から見たときに最もはっきりします。透明な送金の場合、第三者には送信元アドレス、受信先アドレス、金額、手数料、ブロックが見えます。これらの記録をつなぎ合わせると、送金履歴がまるごと明らかになることもあります。
完全にシールドされた送金でも、トランザクションが存在すること、それがどのブロックに含まれているか、そして手数料は第三者に見えます。Sapling のスペンドとアウトプットの数や、Orchard と Ironwood のアクションの数も数えられますが、多くのウォレットはその数をパディング(水増し)しています。アドレス、金額、メモは暗号化されたままです。
透明とシールドが混在するトランザクションでは、漏れる情報が増えます。シールドするトランザクション(t から z)では、透明なインプットと、シールドプールに入る金額は見えますが、受取人は見えません。シールドを解除するトランザクション(z から t)では、送金元は隠れますが、透明な受取人と金額は見えます。シールドプール間の移動、たとえば Sapling から Ironwood への移動でも、プールをまたぐ金額が明らかになります。各トランザクションがシールドプールごとに出入りする正味の金額を公開しており、すべてのノードもその値で各プールの残高を追跡しているためです(ZIP 209)。
シールドされた Zcash の閲覧キー
シールドは、誰に対しても隠すという意味である必要はありません。閲覧キー(viewing key)を使えば、資金を使う権限を渡すことなく、シールドされた入出金を開示できます。受信用閲覧キーは、あなたが受け取った送金を明らかにします。完全閲覧キーは、それに加えて支出も明らかにします。どちらのキーでも資金は動かせません。ZIP 316 のユニファイド閲覧キーは、レシーバーの種類ごとのキーを1つにまとめたもので、uview(完全)または uivk(受信用)で始まります。透明アドレスには閲覧キーは必要ありません。履歴がすでに公開されているからです。閲覧キーは受け取った相手がさらに他人へ渡せてしまうため、会計士など信頼できる人にだけ共有しましょう。
透明プールとシールドプールの間で Zcash を移動する
シールドとは、ZEC を透明アドレスからシールドプールへ移すことです。シールド解除とは、それを再び外へ戻すことです。どちらも、ウォレットが通常のトランザクションとして作成します。境界をまたぐたびに金額が明らかになるため、次の習慣でプライバシーを守りましょう。
- 報酬は成熟したらシールドし、必要になるまでシールドしたままにしておく。
- シールドした直後に同じ金額をシールド解除するのは避ける。金額が一致すると、2つのステップが結び付けられてしまいます。
- 旧 Orchard プールに残高があれば、最新のウォレットで Ironwood へ移す。ZIP 318 は、この移動を標準的な金額に分割して行うことを提案しています。
透明取引とシールド取引の手数料
ZIP 317 は、標準手数料(conventional fee)を論理アクションあたり5,000 zatoshi、最低2アクションと定めています。そのため、シンプルなトランザクションの手数料は10,000 zatoshi、つまり0.0001 ZEC です。透明な部分では、標準的な P2PKH のサイズで換算したインプット数とアウトプット数のうち、多いほうがアクション数になります。Sapling も同様にスペンドとアウトプットの多いほうを取り、Orchard と Ironwood はアクションの数で数えます。
この計算式はすべてのプールを同じように扱うため、シールド取引が透明取引より高くつくことはありません。それでも、マイナーはインプットの数に注意が必要です。シールドするとき、coinbase の出力は1つにつき1つの透明なインプットになります。そのため、ZIP 317 の料率では、20個の出力を1つのシールド出力にまとめると約110,000 zatoshi、つまり0.0011 ZEC かかります。内訳は、インプット分の論理アクション20と、パディングを含むシールド側の2アクションです。
この料率は下がる可能性があります。ドラフト段階の提案では限界手数料を1,000 zatoshi に引き下げるとしており、Zebra 6.4.0 はすでにその料率のトランザクションを受け付けています。手数料の設定はウォレットに任せましょう。
Zcash マイナーが必ず知っておくべき coinbase のルール
透明な coinbase の出力には2つのコンセンサスルールが適用され、2026年9月時点でもどちらも有効です。
1つ目は成熟です。100ブロック前より新しいブロックに含まれる透明な coinbase の出力は、トランザクションで使えません。現在の目標ブロック間隔は75秒なので、待ち時間は約125分です。提案中の NU7 アップグレードではブロック間隔が25秒に変わりますが、100ブロックのルールは維持されます(ZIP 218)。そうなれば、待ち時間は約42分に短縮されます。
2つ目はシールドです。透明な coinbase の出力を使うトランザクションは、透明な出力を一切持ってはなりません。実際には、まず報酬をシールドし、後からシールドプールから使うことになります。現行のプロトコル仕様書にもこのルールは明記されており、ZIP 213 も透明な coinbase についてはこれを維持しています。Zebra の現在のコードもメインネットではこうした送金を拒否し、このチェックを無効にできるのはテストネットワークだけです。
Zcash の coinbase 報酬が透明から始まる理由
2020年7月の Heartwood アップグレードまで、コンセンサスが認めていたのは透明な coinbase の出力だけでした。その後 ZIP 213 がシールドされた coinbase の出力を認め、上記の2つのルールの対象外としました。ただし、それらはあえて公開される仕組みになっています。シールドされた coinbase の出力はすべて、すべてゼロの送信用閲覧キーで復号できなければならないため、誰でもそのアドレスと金額を読めます。さらに、作成にはゼロ知識証明が必要で、ノードがブロックテンプレートを作るたびに処理が増えます。透明な出力ならその負担がなく、ブロックの報酬の分配をエクスプローラーで誰でも検証できます。
ZProMiners では、方針がこの問いに答えを出しています。当プールは透明アドレスへの coinbase 直接受け取りのみに対応しており、すべての報酬はオンチェーンで公開され、誰でも検証できます。報酬(またはあなたの取り分)は、ブロックの coinbase の中で、あなたの t1 または t3 アドレスへ届きます。これはソロマイニング、PPLNS プール、PROP プールのいずれでも同じです。そのため、シールドアドレス、ユニファイドアドレス、TEX アドレスはユーザー名として使えません。tアドレスがそのままユーザー名になるので、アカウントも不要です。
実践のポイント:透明で受け取り、シールドへ移す
マイナーにとって、Zcash の透明とシールドは二者択一ではありません。透明で受け取り、その後でシールドするのが基本です。
- シードを自分で管理するウォレットを選び、t1 アドレスを表示できること、資金をシールドできることを確認する。
- マイニングの始め方のガイドで説明しているとおり、そのtアドレスをユーザー名として使う。
- 報酬ごとに、成熟まで100ブロック待つ。
- 成熟した出力を、ウォレットのユニファイドアドレスへシールドする。複数の出力を1つのトランザクションにまとめると、別々に送るより安く済みます。ただし、インプットが1つ増えるごとに手数料は加算されます。
- シールド残高から使う。会計士が履歴を必要とする場合は、閲覧キーを共有する。
取引所の入金アドレスでは絶対にマイニングしないでください。その鍵はあなたの手元になく、シールドのルールは報酬を受け取る人すべてに適用されます。すでにそうしてしまった場合は、取引所がマイニング報酬の入金を拒否したときの対処法をお読みください。ほかの疑問については、よくある質問やマイニング計算機もあわせてご覧ください。
よくある質問
ZProMiners では、シールドアドレス、ユニファイドアドレス、TEX アドレスでマイニングできますか?
できません。ZProMiners は透明アドレスへの coinbase 直接受け取りのみに対応しており、すべての報酬はオンチェーンで公開され、誰でも検証できます。そのため、ユーザー名には自分で管理するウォレットの t1 または t3 アドレスを使ってください。報酬は成熟したら、そのつどシールドしましょう。
2026年でも coinbase 報酬のシールドは必要ですか?
はい。現行の Zcash プロトコル仕様書は今も、透明な coinbase の出力を使うトランザクションが透明な出力を持つことを禁じており、Zebra もメインネットでこれを適用しています。まず報酬をシールドし、そのシールド残高から使ってください。
マイニングした報酬は、どれくらいで使えるようになりますか?
透明な coinbase の出力は、それを生んだブロックから100ブロック後に使えるようになります。現在の目標ブロック間隔は75秒なので、約125分かかります。
シールド取引は手数料が高くなりますか?
いいえ。ZIP 317 は、どのプールでも論理アクションあたり5,000 zatoshi という同じ標準手数料を定めています。最低2アクション分がかかるため、シンプルなトランザクションなら0.0001 ZEC です。ドラフト段階の提案では、この料率を1,000 zatoshi に引き下げるとしています。
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